物語セラピーで日々の「よかったこと」を見つける：忙しいあなたの自己肯定感を育むヒント
忙しい毎日の中で、「よかったこと」を見つけられていますか？
日々の生活に追われていると、時間に余裕がなく、ついネガティブな出来事や課題にばかり目が行きがちになるものです。「今日もあれができなかった」「もっとこうすればよかった」と自分を責めてしまうこともあるかもしれません。
でも、本当は忙しさの中にも、小さくても心に残る「よかったこと」があるはずです。それは、道端に咲いていた花の色だったり、誰かの一言だったり、自分自身がちょっとだけ頑張れたことだったり。
物語セラピーは、こうした日々の出来事を「物語」として捉え直し、自分自身との向き合い方を変えていく方法です。特に、「よかったこと」に焦点を当てることは、自己肯定感を育み、心の余裕を生み出す強力な一歩となります。
この記事では、物語セラピーの基本的な考え方と、忙しい毎日を送るあなたでも手軽に始められる「よかったこと」を見つける実践方法をご紹介します。
物語セラピーとは？ 基本的な考え方
物語セラピーは、私たちが自身の経験を物語として語り、その物語を聴き、そして必要であれば「語り直す」プロセスを通して、自己理解を深め、困難を乗り越え、自己肯定感を育むことを目指すアプローチです。
私たちは皆、自分自身の「人生の物語」を生きています。そこには、出来事、感情、人間関係、そしてそこから生まれる「自分自身についての解釈」が含まれています。この「自分自身についての解釈」が、私たちの自己肯定感や心の状態に大きな影響を与えているのです。
物語セラピーでは、出来事そのものだけでなく、その出来事をどのように「物語る」か、つまりどのような意味づけをするかが重要だと考えます。ネガティブな出来事に囚われすぎたり、「どうせ自分は…」といった否定的な物語ばかりを語っていたりすると、自己肯定感は低下し、心に余裕がなくなってしまいます。
なぜ「よかったこと」を物語にするのが自己肯定感に繋がるのか？
では、なぜ日々の「よかったこと」に焦点を当て、それを物語にすることが、自己肯定感や心の余裕に繋がるのでしょうか。
- ポジティブな側面に光を当てる: 忙しさの中で見落としがちな、あるいは当然だと思ってしまう「よかったこと」に意識的に目を向けることで、現状のポジティブな側面に光を当てることができます。これは、ネガティブな思考パターンから抜け出すきっかけになります。
- 自分自身の価値や可能性に気づく: 小さな成功体験や、自分が心地よいと感じた瞬間、誰かに感謝されたり感謝したりした出来事などを記録し、物語にすることで、「自分はできた」「自分には良いところがある」「自分は人に影響を与えられる（あるいは人から良い影響を受けることができる）」といった、自分自身の価値や可能性に気づきやすくなります。
- 「ないもの」から「あるもの」へ視点が変わる: ついつい「足りないもの」「できていないこと」に焦点を当てがちな思考パターンから、「既に持っているもの」「できていること」に目を向ける習慣がつきます。これは自己肯定感を高める上で非常に重要です。
- 心の余裕が生まれる: ポジティブな側面に目を向け、自分自身の良い面を再認識することで、心に安心感が生まれ、余裕を持つことができるようになります。忙しい中でも、自分自身を労わる時間を作ろうという気持ちになりやすくなります。
手軽にできる！「よかったこと」を見つける物語セラピー実践方法
ここでは、特別な準備や長い時間をかけずに、今日から始められる「よかったこと」を見つけるための簡単な実践方法をご紹介します。
ステップ1：準備するもの
- ノートや手帳、あるいはスマートフォンのメモアプリなど、書き留めることができるもの。
- ペン（紙の場合）。
これだけです。特別なツールは必要ありません。
ステップ2：時間とタイミングを決める
毎日決まった時間（例：夜寝る前、通勤時間、休憩時間など）に、3分でも5分でも良いので、短い時間を確保しましょう。完璧主義にならず、「今日だけやってみよう」くらいの軽い気持ちで始めるのがおすすめです。
ステップ3：「今日のよかったこと」を見つける視点
さあ、今日の出来事を振り返ってみましょう。どんなに小さなことでも構いません。以下のような視点で考えてみてください。
- 感覚で感じたこと: 空の色が綺麗だった、風が気持ちよかった、美味しいものを食べた、好きな音楽を聴いて癒やされた。
- 人との関わり: 誰かに親切にしてもらった、誰かの役に立てた、大切な人と話して楽しかった、感謝を伝えた・受け取った。
- 自分自身の行動: やろうと思っていたことが一つできた、新しいことに挑戦した、いつもより丁寧に過ごせた、少しだけ休憩できた、自分を褒めた。
- 偶然のできごと: 探していたものが見つかった、欲しかったものが安く買えた、思いがけない発見があった。
「これって『よかったこと』かな？」と迷うようなことでも大丈夫です。「なんだか心が少し軽くなったな」「嬉しかったな」「ホッとしたな」と感じたことなら、それはあなたにとっての「よかったこと」です。
ステップ4：書き留めて、少しだけ「物語る」
見つけた「よかったこと」を書き留めましょう。ただ箇条書きにするだけでなく、少しだけその時の状況や自分の気持ちを付け加えてみましょう。これが「物語る」第一歩です。
書き方の例：
- 簡単なメモ: 「公園で猫を見た。かわいかった。」
- 少し物語風に: 「会社の帰りに公園を通ったら、ベンチの下に丸まって寝ている猫を見つけました。ふわふわしていて、とても気持ちよさそう。見ているだけで、なんだか心がほっこりして癒やされました。忙しさで疲れていたけれど、この小さな出会いが今日の私を少し元気にしてくれた気がします。」
このように、出来事だけでなく、その時の自分の気持ちや、なぜそれが「よかったこと」だと感じたのかを少し言葉にすることで、より深く自分自身と向き合うことができます。
最初は短い文章でも構いません。慣れてきたら、その出来事から何を学んだか、どんな気づきがあったかなどを加えてみるのも良いでしょう。
短時間ワーク例：【3分集中！「今日の光」探し】
- タイマーを3分にセットします。
- ノートやメモアプリを開きます。
- 今日の出来事を振り返り、「よかったこと」「心に残ったポジティブな瞬間」を頭の中で探し始めます。
- 見つけたら、短い言葉や文章で書き留めます。箇条書きでも、短い物語でもOKです。
- 3分経ったら終了です。書けた数や内容の質は気にせず、「今日の光」を見つけられた自分を軽く褒めてあげましょう。
実践する上でのポイント・注意点
- 完璧を目指さない: 毎日続けられなくても、書く内容が立派でなくても大丈夫です。「書こうと思った」「一つでも書き留められた」それ自体が素晴らしい一歩です。
- 比較しない: 他の誰かの「よかったこと」と比べる必要はありません。あなたの感じる「よかったこと」が、あなた自身の物語です。
- ネガティブなことは？: このワークは「よかったこと」に焦点を当てますが、ネガティブな出来事があった時は、無理に無視する必要はありません。ただ、「それでも、こんな『よかったこと』もあったな」と、光の部分にも意識を向ける練習として捉えてみてください。
- 誰かに見せる必要はない: これはあなた自身のためのワークです。誰かに評価されることを気にせず、自由に、正直に書きましょう。
まとめ：小さな「よかったこと」が、自己肯定感という名の大きな光に
忙しい毎日の中で、自分を責めたり、心に余裕を持てなかったりすることは誰にでもあります。しかし、そんな時こそ、日々の小さな「よかったこと」に目を向ける物語セラピーの実践が、あなたの心を優しくサポートしてくれます。
些細だと思える出来事でも、そこに意識的に光を当て、自分自身の言葉で物語として紡ぎ出すこと。このシンプルな行為が、あなたが持つ強さや価値、そして人生のポジティブな側面に気づかせてくれます。
今日からほんの数分、あなたの日常の中に隠れた「よかったこと」探しを始めてみませんか。小さな一歩が、自己肯定感という名の大きな光を、きっとあなたの心に灯してくれるはずです。