忙しい毎日で見失いがちな『あなたの価値観』:物語セラピーで見つけ、自己肯定感を育むやさしい方法
忙しい毎日の中で、ふと「自分は何を大切にしているんだろう?」と立ち止まることはありませんか。日々タスクに追われ、自分のことよりも周囲や仕事が優先になりがちな中で、自分自身の内面や、心の底にある「本当に大切にしたいもの」が見えにくくなってしまうことは少なくありません。
そのような時、物語セラピーは、忙しさで埋もれてしまったあなたの「価値観」をやさしく見つけ出し、自己肯定感を育む手助けとなるかもしれません。この記事では、物語セラピーがどのようにしてあなたの価値観の発見に繋がり、それが自己肯定感にどのように影響するのか、そして忙しい毎日でも手軽に始められる実践方法をご紹介いたします。
物語セラピーとは何か
物語セラピーは、あなたのこれまでの経験や日々の出来事を「一つの物語」として捉え直し、その物語を語ったり、書き出したり、じっくりと見つめ直すことで、自分自身への理解を深めていくアプローチです。
これは専門的な治療法とは異なり、特別な知識や技術は必要ありません。自分の心の中で起こったこと、感じたこと、行動したことを、まるで本や映画のように少し距離を置いて眺めてみることから始まります。
なぜ物語セラピーが価値観の発見と自己肯定感に繋がるのか
では、なぜ物語セラピーがあなたの価値観を見つけ、自己肯定感を高めることに役立つのでしょうか。
1. 日々の出来事を客観的に見つめ直せる
忙しさの中にいると、出来事を感情的に受け止めたり、「~しなければならない」といった思考に囚われたりしがちです。物語として捉えることで、少し客観的な視点を持つことができます。まるで「自分という物語の主人公」を外から眺めるように、冷静に出来事や自分の反応を観察することができるようになります。
2. 出来事の背景にある感情や考えに気づける
物語として語る、あるいは書き出す過程で、その出来事の時自分が何を考えていたのか、どんな感情が湧き上がっていたのかに気づきやすくなります。「あの時、なぜあんなに腹が立ったのだろう?」「あの瞬間の喜びは何だったのだろう?」といった問いかけは、自分自身の内側を深く探るきっかけとなります。
3. 繰り返し現れるテーマやパターンから価値観が見えてくる
いくつかの出来事を物語として見つめ直していくうちに、あなたがどんな状況で心が動くのか、どんなことに喜びや怒り、悲しみを感じるのか、といったパターンが見えてくることがあります。それはまさに、あなたが日々の出来事を通して無意識のうちに「何を大切にしているか」のヒント、つまり「価値観」の現れなのです。
例えば、誰かの役に立てた時に大きな喜びを感じるなら、「貢献」や「他者への奉仕」が大切な価値観かもしれません。困難を乗り越えた時に達成感を感じるなら、「成長」や「挑戦」を重んじているのかもしれません。
4. 自分の価値観を知ることで自己肯定感に繋がる
自分の価値観が何であるかに気づくと、「自分がなぜこのように感じるのか」「なぜこの行動を選んだのか」といった理由が腑に落ちることがあります。それは、「自分はこういう人間なんだ」という自己理解に繋がり、「これでいいんだ」という肯定的な感覚、つまり自己肯定感を育む土台となります。
また、自分の価値観に沿った行動ができていると気づいた時には、「自分は大切なことを守って生きている」という実感や、「自分自身の人生の主人公として、意味のある選択ができている」という感覚が得られ、これも自己肯定感を高めます。
具体的な実践方法:忙しい毎日でも手軽にできるワーク
物語セラピーで価値観を見つけ、自己肯定感を育むために、特別な時間を取る必要はありません。日々のスキマ時間や、少し心が落ち着いた時などに手軽にできる方法から始めてみましょう。
ワーク例1:今日の「小さな物語」メモ
- 短い時間で: 1日の中で心が少しでも動いた出来事を一つ思い出します。それは大きなことでなくて構いません。通勤途中に見かけた景色、職場で交わした短い会話、食事の時の小さな気づきなど、どんなことでも良いのです。
- 物語として捉える: その出来事を、まるで誰かに話すかのように、短い文章でメモしてみましょう。箇条書きでも構いません。「〇〇ということがありました。その時、私は〇〇と感じました。」のように、状況と自分の感情や考えをセットで書くのがポイントです。
- 問いかけ: メモした内容を見て、「なぜこの出来事が気になったのだろう?」「この時感じたことから、私が大切にしていることは何だろう?」と、自分に問いかけてみます。答えが見つからなくても大丈夫です。問いかけること自体に意味があります。
この「小さな物語」メモを続けることで、あなたが日々の生活の中で無意識に何に反応し、何を重視しているのかが見えてくることがあります。
ワーク例2:過去の「心が満たされた瞬間」を探す
- 過去を振り返る: これまでの人生で、「楽しかった」「嬉しかった」「達成感があった」「心が満たされた」と感じた瞬間をいくつか思い出してみます。
- 物語として語る(書く): 思い出した瞬間を、短い物語として語ったり、書き出したりしてみましょう。その時の状況、関わっていた人、自分の気持ち、そして「なぜ心が満たされたのか」に焦点を当ててみてください。
- 共通点を見つける: いくつかの「心が満たされた物語」を並べて見て、そこに共通する要素や感情がないかを探してみます。「いつも人との繋がりの中で満たされるな」「新しいことに挑戦している時が楽しいな」「人の役に立てた時に充実感を感じるな」など、共通点が見つかるかもしれません。その共通点の中に、あなたの大切な価値観が隠されています。
このワークは、あなたの内側にある「こうありたい」「これを大切にしたい」という願いを映し出す鏡のようなものです。
実践する上でのポイントや注意点
- 完璧を目指さない: 上手に物語を作る必要はありません。大切なのは、自分の心と向き合う時間を持つことです。
- 自分を責めない: ネガティブな出来事や感情が出てきても、「ダメだな」と自分を責めないでください。それもあなたの一部であり、大切な気づきのヒントになることもあります。ただ「こういう感情があったんだな」と受け止めることから始めましょう。
- 無理せず、気が向いた時に: 毎日必ず行わなければならない、というものではありません。疲れている時は無理せず休息を優先してください。心が少し落ち着いて、「やってみようかな」と思った時に手軽に取り組んでみましょう。
- 誰かに見せる必要はない: あなた自身の心のためのワークです。内容を誰かに話したり見せたりする必要はありません。安心して自分の気持ちと向き合ってください。
まとめ
忙しい毎日の中で自分自身を見失いがちな私たちにとって、自分が本当に大切にしたい「価値観」を知ることは、自分軸を確立し、自己肯定感を育む上で非常に重要です。
物語セラピーは、日々の小さな出来事を物語として見つめ直すことで、あなたの内側にある声に耳を傾け、そこに隠された価値観をやさしく見つけ出す手助けをしてくれます。
ご紹介したワークは、特別な準備なく、忙しい合間でも手軽に始められるものです。物語を紡ぐ過程で見えてくるあなたの価値観は、「自分はこれでいいんだ」という自己肯定感の種となり、心の余裕を取り戻すきっかけとなるでしょう。
ぜひ、今日からあなたの日常の小さな物語に耳を澄ませてみてください。そこから、あなただけの輝く価値観がきっと見つかるはずです。