物語セラピーで「なりたい自分」を物語る:自己肯定感につながる未来の描き方
忙しい毎日の中でも「なりたい自分」を描く大切さ
日々の忙しさに追われていると、つい目の前の出来事や課題にばかり意識が向きがちです。やらなければならないことに囲まれ、自分のことや将来についてゆっくり考える時間を持つことは難しいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。心が休まらず、漠然とした不安や焦りを感じることもあるのではないでしょうか。
このような状況の中で、「なりたい自分」や「叶えたい未来」について考えることは、後回しになりがちです。しかし、実は「なりたい自分」を心に描くことは、忙しい毎日の中でも自分を見失わず、自己肯定感を育むために非常に有効な方法の一つとなります。
この記事では、物語セラピーがどのように「なりたい自分」を描くことに役立つのか、そしてそれがなぜ自己肯定感の向上に繋がるのかを解説します。また、日々の生活に手軽に取り入れられる実践方法もご紹介いたします。
物語セラピーとは、そして「なりたい自分」を描くこと
物語セラピーは、自分自身の経験や感情を「物語」として捉え、語り、書き出すことを通じて、自己理解を深めたり、心の整理をつけたりする心理的なアプローチです。過去や現在の出来事だけでなく、これから起こりうる未来や、心の中で思い描く理想の姿もまた、「自分自身の物語」の一部として扱うことができます。
「なりたい自分」を描くことは、単なる空想や願望リストを作るのとは少し異なります。物語セラピーの視点では、「なりたい自分」を、これから紡いでいく自分自身の物語の「主人公」として描く行為と捉えます。どのような主人公として、どのようなストーリーを進んでいきたいのか。そう考えることで、漠然とした願望ではなく、より具体的で、自分にとって意味のある目標や方向性が見えてきます。
なぜ未来を物語ることが自己肯定感に繋がるのか
「なりたい自分」を物語ることは、自己肯定感に様々な形で良い影響を与えます。
まず、未来に目を向けることで、現状の課題や困難に対して「この状況を乗り越えたら、こんな自分になりたい」という希望を持つことができます。希望は、困難な状況でも立ち止まらず、前に進むためのエネルギーとなります。
次に、「なりたい自分」を具体的に描く過程で、自分が何を大切にしているのか、どのような価値観を持っているのかに気づくことがあります。これは自己理解を深めることにつながり、「ありのままの自分」を肯定的に受け入れる土台となります。
さらに、未来の自分を物語ることは、その実現に向けて小さな一歩を踏み出すきっかけを生み出します。「なりたい自分」に近づくための行動計画を立てやすくなり、その行動が成功体験となれば、さらに自己肯定感は高まります。たとえすぐには大きな変化がなくても、未来に向かって努力している自分を認めることができるようになります。
手軽にできる「未来の自分」を物語るワーク
忙しい日々の中でも取り入れやすい、「なりたい自分」を物語る簡単なワークをご紹介します。特別な準備は必要ありません。静かに自分と向き合える時間を見つけて、気軽に試してみてください。
ワーク例1:10分ライティング「未来の自分からの手紙」
- ノートとペン、またはスマートフォンのメモ機能などを準備します。
- タイマーを10分にセットします。
- 深呼吸を数回行い、リラックスします。
- 「1年後の自分」や「5年後の自分」になったつもりで、今の自分に向けて手紙を書きます。
- どんな毎日を送っていますか?
- どんな気持ちでいますか?
- どんなことを達成しましたか?
- 今の自分に伝えたいメッセージはありますか? など、未来の自分になった感覚で自由に書き出してみましょう。
- 10分経ったら書くのをやめます。書いた内容を改めて読み返してみましょう。
ワーク例2:イメージング「理想の一日」
- 静かで落ち着ける場所で座るか横になります。
- 目を閉じ、深呼吸を繰り返して心と体を落ち着かせます。
- 「なりたい自分」として過ごしている「理想の一日」を頭の中で思い描きます。
- 朝、どんな気持ちで目を覚ましますか?
- 誰と、どこで過ごしていますか?
- どんな仕事をしていますか? どんな趣味を楽しんでいますか?
- どんな感情を抱いていますか? 五感を使い、できるだけ具体的にイメージしてみましょう。色、音、香り、肌触り、味など、感じるものすべてに意識を向けます。
- 心地よさを十分に味わったら、ゆっくりと目を開けます。
- 感じたことや気づいたことを、簡単にメモしておくと良いでしょう。
これらのワークは、短時間でも「なりたい自分」に意識を向ける機会を作ることができます。繰り返し行うことで、なりたい自分像がより鮮明になったり、新たな発見があったりします。
実践する上でのポイントと注意点
物語セラピーとして「なりたい自分」を物語る際に、心に留めておきたい点がいくつかあります。
- 完璧を目指さない: 最初から完璧な「なりたい自分」像を描こうと気負う必要はありません。漠然としたものでも、小さな一歩から始めてみましょう。
- 批判しない: 心の中に浮かんだ考えやイメージを、良い・悪いの判断や批判をせずに、そのまま受け入れます。否定的な自己評価はせず、建設的な視点を意識します。
- 「〜ねばならない」を手放す: 「こうならなければ幸せになれない」「人からこう見られるべきだ」といった義務感や外部からの期待ではなく、自分が心から「こうありたい」と感じる姿に目を向けましょう。
- 小さな変化に気づく: ワークを続ける中で、「なりたい自分」に近づくための小さな行動をとれた自分や、少しでもポジティブな気持ちになれた自分に気づき、それを認めましょう。
- 継続可能な形で取り入れる: 毎日同じ時間にワークをするのが難しければ、週に一度や、心が疲れたと感じた時など、無理のないペースで継続できる方法を見つけてください。
まとめ:未来を物語り、自己肯定感を育む
忙しい毎日を送っていると、未来についてゆっくり考える時間を持つことは難しいかもしれません。しかし、物語セラピーの考え方を取り入れ、「なりたい自分」を物語ることは、自分自身の物語の主導権を取り戻し、前向きな気持ちや希望を育む力となります。
未来の自分を心に描くことは、自己理解を深め、自己肯定感を高めることにも繋がります。ここでご紹介したワークのように、短時間で手軽にできることから始めてみてはいかがでしょうか。
あなた自身の「なりたい自分」の物語を紡ぎ始めることで、忙しさの中でも心の余裕を取り戻し、自分を肯定的に受け入れる一歩を踏み出せることを願っています。