物語セラピーで育む客観視の視点:忙しいあなたに役立つ自分への向き合い方
日々の忙しさに追われ、ついつい自分自身のことは後回しになっていませんでしょうか。やらなければならないことに集中するあまり、自分の本当の気持ちが見えなくなったり、過去の出来事や他人の言葉にいつまでも囚われてしまったりすることもあるかもしれません。
そんな時、「自分を客観的に見る」ことができたら、少し心にゆとりが生まれると思いませんか。感情に飲み込まれず、落ち着いて状況を捉え直すことができれば、日々のストレスも少し軽減されるはずです。
この記事では、物語セラピーがどのようにして自分を客観的に見る力を育み、忙しい毎日の中で心の余裕と自己肯定感を育む助けになるのかを、分かりやすく解説いたします。専門的な知識は一切必要ありませんので、どうぞお気軽にお読みください。
物語セラピーとは何か
物語セラピーとは、簡単に言うと「自分自身の人生や経験を物語として捉え直し、語る(書く・話す)ことを通して、自分自身を理解し、より良い方向に変化を促す」アプローチです。
私たちは皆、自分自身の物語を心の中で語りながら生きています。「私はこういう人間だから」「あの時こうだったから今はこうだ」といった、自分自身や出来事に対する無数の物語(ナラティブ)を持っています。物語セラピーでは、これらの物語を意識的に見つめ、必要であれば新しい物語を創造することで、困難な状況を乗り越えたり、自己肯定感を高めたりすることを目指します。
なぜ物語セラピーが客観視や心の余裕に繋がるのか
物語セラピーが自分を客観的に見る力や心の余裕に繋がるのには、いくつかの理由があります。
まず、出来事や感情を自分自身から少し切り離して見ることができるようになるからです。心の中で渦巻いている感情や思考を、「私という物語の登場人物が感じていること」「私という物語の中で起こった出来事」として捉えることで、まるで映画や小説を見ているかのように、一歩引いた視点から眺めることができます。
次に、自分の思考パターンや感情の癖に気づきやすくなるという点です。物語として語る過程で、「私はいつもこのパターンで考えてしまうな」「こういう状況ではいつも同じように感じるな」といった、無意識のうちに繰り返している自分自身のパターンを発見しやすくなります。これに気づくことが、パターンから抜け出す第一歩となります。
また、客観視ができるようになると、問題や困難に対して冷静に対処できるようになるというメリットもあります。感情に支配されてパニックになるのではなく、「これは物語の中の一つの章にすぎない」「この登場人物(自分)はどうすればこの困難を乗り越えられるだろうか?」といった視点を持つことで、建設的な解決策を見つけやすくなります。
そして、これらの経験は、自分自身をより深く理解し、受容することに繋がります。自分の弱さや失敗も「物語の一部」として受け入れることで、自分自身に対する否定的な評価が和らぎ、自己肯定感が高まるのです。感情に振り回されることが減るため、自然と心に余裕も生まれてきます。
手軽に始められる物語セラピーの実践方法
「物語セラピー」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、日々の忙しさの中でも手軽に取り組める実践方法があります。短時間でできる簡単なワークをご紹介します。
ワーク例1:『今日の出来事』を短い物語にする
- 一日の終わりに、ノートやスマートフォンのメモ帳を開きます。
- 今日あった出来事の中から、特に心に残ったもの、あるいは少し気になっているものを一つ選びます。
- その出来事を、「物語」として、登場人物(自分や関わった人)、場所、時間、そして何が起こったか(出来事)を簡潔に書き出してみましょう。
- その時自分がどう感じたか、どんなことを考えたかを、まるで物語の登場人物の心情描写のように書いてみます。
- 例:「今日の会議で、〇〇さんは私の提案に対して厳しい意見を述べた。主人公である私は、その言葉に少し動揺し、心の中で反論したが、何も言い返せなかった。帰りの電車の中で、なぜ言い返せなかったのか、その時の自分の気持ちを考え続けた…」
- 最後に、この出来事を「物語として見た」ときに、何か新しく気づいたことはないか、書き加えてみます。
このワークは5分から10分程度でできます。出来事と自分の感情を「物語」という枠に入れることで、少し距離を置いて眺める練習になります。
ワーク例2:『未来の自分へのメッセージ』を物語として描く
- 少し先の未来(1ヶ月後、半年後、1年後など)の自分を想像します。
- その未来の自分が、どんな日々を送っているか、どんな気持ちでいるかを「短い物語」として書いてみます。
- 例:「〇〇ヶ月後、主人公である私は、毎朝太陽の光を浴びて心地よく目覚めている。仕事では、以前よりも落ち着いて対応できるようになり、小さな成功を重ねている。夜は自分のための時間を作り、好きな読書や趣味を楽しんでいる。心の中は穏やかで、未来への希望に満ちている…」
- 書き終えた物語を読み返し、その未来を実現するために、今日の自分ができることは何かを考えてみましょう。
これは「なりたい自分」を物語として具体的に描くワークです。単なる目標設定とは異なり、物語にすることで感情や状況を豊かにイメージでき、モチベーションを高めるだけでなく、今の自分との距離を客観的に捉えるきっかけにもなります。
実践する上でのポイントや注意点
物語セラピーを日々の生活に取り入れる際には、いくつか心がけていただきたい点があります。
- 完璧を目指さないこと: 最初に書いた物語が上手くまとまっていなくても、自分を責める必要はありません。ただ「語る」「書く」という行為そのものに意味があります。
- 評価や判断をしないこと: 書いた内容に対して、「これはダメだ」「こうでなければ」と評価したり判断したりせず、ありのままの自分や出来事を書き出してみてください。客観視とは、善悪を判断することではなく、ただ「ありのままを見る」ことです。
- 短時間でも継続すること: 毎日決まった時間でなくても構いません。数分でも良いので、心に留まった出来事や感情を物語として書き出す習慣をつけてみましょう。継続することで、客観視の力が自然と育まれていきます。
- これは治療法ではありません: 物語セラピーは、自己理解を深め、自己肯定感を育むためのツールですが、専門的な心理療法や診断に代わるものではありません。もし、強い精神的な困難を抱えている場合は、専門機関にご相談ください。
まとめ
日々の忙しさの中で自分を見失いがちな私たちにとって、自分を客観的に見る視点を持つことは、心の余裕と自己肯定感を育むために非常に重要です。物語セラピーは、自分自身の経験や感情を「物語」として捉え直すことで、この客観視の力を養う手助けをしてくれます。
簡単なワークを短時間でも継続して行うことで、出来事や感情に振り回されにくくなり、自分の思考パターンに気づき、落ち着いて自分や状況を見つめ直すことができるようになります。これは、ありのままの自分を受け入れ、自己肯定感を高めるための大切な一歩です。
忙しい毎日だからこそ、少し立ち止まり、自分自身の物語に耳を傾けてみませんか。物語セラピーが、あなたの心に穏やかさとゆとりをもたらすきっかけとなることを願っています。